ギャルの方法論を使ってAKBのビジュアルを作る。ウケる本質は同じ。稀代の編集者・米原康正インタビュー(2/2)

-
INTERVIEWS:
米原康正/編集者/アーティスト


どう考えたってオカシイじゃん、日本人がハーフモデルになれるわけないだろうって (笑聲) 。それがメジャーだとしたら、その反動のアンチ、要するにカウンターカルチャーが出て来ないと、女の子達がアップアップしちゃうよね。

2005年前後って凄いハーフモデルが大ブームだったじゃん。女性誌の特集でもハーフモデルになりたいとか、ハーフモデル的なメイク法とかさ。どう考えたってオカシイじゃん、日本人がハーフモデルになれるわけないだろうって (笑聲) 。

それがメジャーだとしたら、その反動のアンチ、要するにカウンターカルチャーが出て来ないと、女の子達がアップアップしちゃうよね。そんな時に秋元さんからAKB48の企画が来たんだよ。僕のAKB理解は、地下系っぽいやり方、インディーっぽいやり方をメジャーでやりたいんだなと思ってたんだ。

良いよって打ち合せ行ったら、いきなりそこで顔見せだったっていうくらい嵌められて、いきなりビジュアルディレクターをやらないといけない事になったんだ。「ヨネちゃん、女子ウケ宜しく」とか言われて、だったら最初のオーディションからやりたかったなとは思ってたけどね (笑聲) 。 だけど何でもやりたいこと出来て凄い楽しかったよ。

その時の僕の中の「女子ウケ」は、こじはる (小嶋陽菜) だったんだよ。あとで篠田 (篠田麻里子) が入って来て彼女も「女子ウケ」するよって。前田 (前田敦子) は、もう全般のアイドルとしてのってのがあったり、そんな風に色々と分けてた。当時アイドルといえば、ポラロイドを使ったサービスだったんだけど、僕は「いやもうチェキですよ!」ってチェキを使ってチェキでみんなが撮り合うとかに変えていったんだ。

あの当時、コギャルに僕がやらせてた事をまんまAKBにやらせて、アイドルなんだけど、凄いギャルっぽい方法論を使ってAKBのビジュアル関係を作ってたりしたんだよね。普通の女子と同じ価値観、が僕の「女子受け」解釈だった。

このくらいの世代が来るんだったら、このくらいの世代をやればいいんだろうっていう大まかな考えを商店街が持ってて、それに代理店が「流石でございますね」って言ってその通りの店を作ってあげるっていうね。

日本の流れってさ、人が多く集まる場所にみんなが知ってる物を置けば売れるっていう、訳の分からないマーケティングがあるのよ。当たり前のマーケティングだと思うんだけど、それはどういう人達がそこの街に集まってんのかとか、どういう物をその町に求めてんのかとか関係なく、とにかく人が沢山集まってる所に、若い子達が集まるんだったら、若い物を置けばいいんだろとか、このくらいの世代が来るんだったら、このくらいの世代をやればいいんだろうっていう大まかな考えを商店街が持ってて、それに代理店が「流石でございますね」って言ってその通りの店を作ってあげるっていうね。

そういうとこに僕はマーケティングもブランディングも何にも無いと思ってたりするんだけど、偶然というか裏原とかが流行って人がワァーと来だしたりするじゃん。そうすると本来は裏原的なものがなぜウケたかという事を大切にして、そこを続けていこうっていう考えなきゃいけないのに、そうじゃなくなる。

とにかく人が集まりだしたから小さいお店を潰して、大きい箱ものにして大きいスポンサーを連れてくれば、もっと売れるじゃんみたいな。僕は都会の地方都市化って呼んでいるんだけど、結果としてどんどん小さい店が無くなり、どんどん地方都市と同じ街並みになってる。カラオケ館があってファストがあって、もうコレって地方じゃんって思う。

せっかく地方から期待して原宿来たのに原宿には、ここにしかない店がもうないんだよ。しかも場所を探そうとしても家賃とかすごい高くなってるから。もともと原宿って家賃が安かったから、みんなが店を出したわけじゃん。裏原なんてモロそう。今はとてもじゃないけど普通の個人は、お店なんて出せない状況になってる。どんどんビルが建てられて、そこに入るのはやっぱり誰もが知っているようなものしかない。

そうすると原宿って、今までの遺産で食っているというか。確かにイメージとしては原宿はお洒落ってイメージかもしれないけど、じゃあ今本当にお洒落ですか?っていう話。大人の人達が考えるハイブランドが表参道にいっぱいあってとか、それはそれで良いんだけど、靖国通りとか、今や新宿もハイブランドストリートみたいになってきてる。どこもかしこも同じというか銀座みたいになってきてるじゃない。それでどうするの?って。今後、日本はどんどん人口が少なくなるし、ハイブランドを買わなくなるし、今の若い子たちはもうファストしか買わないから。

2015年の服飾系学校のアンケートで1番あなたがお洒落と思うブランドを挙げて下さいってやった時、1位が『WEGO』で、2位が『H&M』で、3位が『ユニクロ』。別に良いとか悪いとかじゃなくて、その事実を大人達はちゃんと考えないといけない。

ドメスティックのブランドって言っても、若い子達は知らないからさ。2000年代にドメスティックブランドが本当に売れたじゃん。その時に何をやったかって言うとと、大人と同じ方法論で売れる物を作れば良いとか、みんなが着てる物を作れば売れるんだみたいな、みんな同じ事になっちゃったんだよ。

原宿とか裏原も同じで、ある日突然みんながチャリンコ乗ってるって。あれ?みんなピストじゃんて言う。あれ下から見ても、もう区別つかないじゃん。どこもかしこも自転車に合わせて、同じズボン作ってさ。そしたらもう安くて良いんだもん。あの辺から今の状況が始まっていると思うな。

僕のモチベーションは常に女子にウケる、女にモテる、って事だったりするんだけど、日本のオッさん文化って女の子にモテないじゃん。日本では通用したとしても、世界では通用しないですよっていうエロ観。

中国人って童顔巨乳が凄く好きなんだけど、幼い子が好きなわけじゃないのよ。日本人の童顔巨乳は、13歳とか14歳のおっぱいデカい子みたいになっちゃうじゃない?それって向こうではもう変態だと思われててさ、基本的に中国は、歳取っても若い顔をしている巨乳が好きなの。

だけど、日本って税金使って、某クールジャパンとかアイドルとかをガンガン連れてったりするわけじゃん。しかも10代の子達に水着とか着せてさ、もう変態だよね。別に僕はエッチなことは好きだけど、中学生とかにエッチな格好をさせて撮ろうだなんて思ってもいないよ。それは日本でやってる分には良いのかもしれないけど、それを、国が海外に持って行こうってやってるのは果たしてどうなのかなってこと。

僕のモチベーションは常に女子にウケる、女にモテる、って事だったりするんだけど。日本のオッサン文化って女の子にモテないじゃん。確かに男社会で金は動かして来たかもしれないけど、今や女子がこんなにお金を動かしている時代なのに、オッサン的な考え方で世の中を動かそうとしている。それも日本では通用したとしても世界では通用しないですよっていうエロ観。

いくらでもエロくなって良いんだけど、それはそういう趣味の人達のためとかさ、日本ってそのエロい事を一般にしようとするじゃん、例えば女優は、エロくないとダメだとか訳分からない事を言い出す。あぁいうの僕まったくダメで、女優になるには脱がないとって、バカだろこの人達って思うのよ。脱いでも良いけどそこで判断する事じゃないよね。変態が世の中を作っていくとしても、その変態を変態としてちゃんと整備して、プロモートするって事が日本は出来ていない。それが出来れば日本の変態って海外の枠にどんどんハマっていくと思う。それを一般として見せるから、普通の人が引くのよ。「日本人全員、変態じゃないっすか。女の子全員、AVじゃないですか。」って中国人は思ってるもん (笑聲) 。

勝負するんだったら地元にカルチャーがないと駄目って事に中国人は気付いてるし、そういう部分を今まさに中国人がやってる。それをすっかり忘れて、どんどんカルチャーを捨てていく日本がすごく心配。

本当に今、日本はカルチャーを殺してどうなっていくんだろうって思う。中国は文化大革命で、カルチャーを全て捨ててるじゃない。天安門を知らない80年代、90年代、00年代生まれの子達を、中国では新人類的な呼び方で呼んでるんだけど、彼ら、彼女達が育った中国は資本主義体制の経済だから、全く共産主義って言う部分を意識しなかったりするんだ。

そこで何が不足しているかって自分達が考えた時に、彼らはカルチャーが無いって思ったんだ。それでどうしたかというとカルチャーがある所から持ってこようってなった。無いんだったら、そのまま持ってきましょう、って戦後の日本と同じだよね。

今、必死にカルチャーを勉強している最中で、日本が戦後に培ってきた色んな国のカルチャーを自分なりに編集して来た様な事を中国人がやり出してる。日本人が作ったイタリア料理って、イタリア人が喜ぶくらい編集能力が優れてるじゃん。だから、勝負するんだったら地元にカルチャーがないと駄目って事に中国人は気付いてるし、そういう部分を今まさに中国人がやってる。

それをすっかり忘れて、どんどんカルチャーを捨てていく日本がすごく心配。だから原宿に学校が出来て、そこで理事やらせてもらったりとか、自分で絵を描き出したりとかする部分は、もう人がカルチャー作ることに期待するよりも、自分でそれを作る側にならないといけないってことにふと気づいたとこから始まるんだよ。僕もう大人じゃんって (笑聲)。 もう誰かがやってくれるって思ってちゃダメだって。だから自分でやり出すっていうところを大切にしないといけない。それで今、色んな事を自分でやり出してるっていう状況だったりするんだ。

今まで僕はエロいことをいっぱいやってきたんだけど、それは巷に溢れるエロに対しての否定としてやってるつもり、僕、別にソープとか全然興味ないし、だったら街に出てナンパしようよって思ってる方だから。

自分がやっている事を、きちんと理解してくれて文章に書いてあったりすると「わぁ、みたいな!ちゃんと理解してくれてる人がいる!」ってそういうところに凄い感動があるし、こういう事をやってきて良かったなって思ったりする。僕はフェミニズムとして女性を扱ってるつもりだけど、既成のフェミニズムとはまったく形が違うと思ってる。

女性の裸を撮ってるって言うとさ、人ってその部分だけを自分の文脈に合わせて解釈したりするから、「やっぱりヨネさん、ソープ好きっすよね!」みたいに思われたりするんだけど、僕、別にソープとか全然興味ないし、だったら街に出てナンパしようよって思ってる方なのよ。僕は人と人との関係性がないと、どんなスケベな事しても、それをエロとは思わない。

今まで僕はエロいことをいっぱいやってきたんだけど、それは巷に溢れる「人間の関係性よりも、金銭的なものを重要視する」エロに対しての否定としてやってるつもり。なのにほとんどの人が、おっぱいが見えているってだけで、僕が否定してるものと同じものとして捉えてしまう。そんな人、相手にしなくていいよって思ってたんだけど、最近もっと僕が「僕のエロはこういう事なんです」って、喋って伝えていく事が大切なんだなと思い始めた。だから、こういうインタビュー、本当にありがたい。

Instagramでフォロワー数を増やす事ばっか考えないでさ。それぐらいのスピード感でやれるんだぞっていう所を見せれたらいいなと思ってる。

いま『Instagram』の時代になり写真が溢れて、技術的に古い世代が一生懸命、暗室に篭ってやっていた事を、軽くフォトショップどころかアプリでも超えれるっていうこの状況になった時に、今の若い子達は、写真は近すぎて買うもんじゃないとか、特別な物じゃないとか、考えてると思うんだ。

写真が良いとか悪いとか上手下手ってより、誰が写ってるとか、どこで撮ってるかってところが大切なんだもん。しかもプロが見ればこれアプリ使ってんじゃんて分かるけど、素人目で見れば解かんなかったりする技術力。

そんな時に、写真で作品を作っていく作業は凄く大変なんだなっていう風に思ってる。特に僕の場合はその写真の素人性を売りにしてたからね。そんな状況で自分の作品を売るって事を考えると、もう一つ何か手を加えなきゃって思って、自分の写真に絵を描き始めたんだ。

僕はクリエイティブっていう事は、何かをやり出すっていう事だと思ってて、僕の中の日常的なやり方は編集者として写真を扱うっていう事だったりするんだ。今までだったら僕が絵を描くなんて事は無かったんだけど、若い子達もやればいいじゃんて。そういうところを見せたり出来るのかなって考えてる。

フォロワー数を増やす事ばかり考えないで、自分の作ってみたものをそこで売ってみたらどうだとかそういう提案が出来ていけると良いと思う。というかオッサン42歳で写真を撮り始め、57歳で絵を描きだしたっていうね(笑聲) 。 一応それくらいのスピード感でやれるんだぞっていう所を、見せられたらいいなと思ってる。

直ぐに大人のシステムがばぁーと来て吸い上げていかれないように、今まではウケたところをくるくる回転させて、すぐ飽きられていくの繰り返しだったから。そうじゃなくてちゃんと文化としてその世代を超えた形として残していきたいと思ってる。

売れなかったら話にならないと思う。僕は今まで人気って事を考えた時に、やっぱりフォロワーが沢山いた方がって思ってたりしたんだけど、今は少なくても良いから本当に好きな人を何となくではなく、ちゃんと作るって事と、その人が僕の思想というか作品を認めてくれた結果として作品を買ってくれる状況が出来る事が凄く大切なんだなと思ってる。

だから売れなくても良いとは全然思ってない訳よ。僕の事、全然解かってくれないっていう言い方は凄く嫌なんだ。だって解からせようとしてねーじゃん!ってよく思う事があって、前は解からない人達に必死に解かってくれよっていう作業をしていたんだけど。それがこの状況になってしまうと力が他の所に使われて勿体ないから、解かる人を探して解かる人に伝える為にも、学校とか場所を作るって言う事も凄く大切になってくるんだなと思ってる。

それは大きい場所じゃなくて小さくていいのよ。だからほんとに小さい所からもう一回やり直し、裏原とコギャルとか小さい所から人を集めて、ちゃんとその人達が行き着く終着点じゃないんだけど、そこも一緒に考えていこうって思ってる。直ぐに大人のシステムがばぁーと来て吸い上げていかれないように、今まではウケたところをくるくる回転させて、すぐ飽きられていくの繰り返しだったから。そうじゃなくてちゃんと文化としてその世代を超えた形として残していきたいと思ってる。

※ラストオージー:
雑誌『宝島』で高木完と藤原ヒロシがカルチャーを紹介していた連載ページ。『要チェック』という流行語を生み出した事でも有名。更に両氏が活動していたタイニー・パンクスの楽曲にもなり、レーべル’’MAJOR FORCE’’の第一弾シングルとしてリリースされている。

※ピスト:
ピストバイクの略。元々ニューヨークのメッセジャーたちが乗っていたトラックレースに使用される競技用の自転車。日本では2009年頃にブームとなり渋谷、原宿のキーマン達が注目したことにより日本でも一気に流行となった。

※ギャルズライフ:
1978年頃に『婦人之友』から創刊され物議を醸した、ティーン向けの雑誌。1984年2月14日、当時の自民党政調副会長だった三塚博が衆議院予算委員会の席上で、この「ギャルズライフ」を含むティーンズ誌5誌を名指しで「性欲雑誌」と糾弾。その後、「ギャルズシティ」と誌名変更するも1年余りで廃刊となる。

営業力ではなく編集力を。昭和的エディット能力が求められる訳。稀代の編集者・米原康正インタビュー(1/2)☞戻る


編集者、クリエイティブディレクター、フォトグラファー、DJ。世界で唯一チェキをメイン機材とするアーティストとして幅広く活躍。90年代以降の東京カルチャーシーンを象徴する雑誌『egg(エッグ)』『アウフォト』『smart girls (スマートガールズ)』などを創刊してきた仕掛人であり、AKB48の立ち上げ時にはビジュアルディレクションを担当するなど、きゃりーぱみゅぱみゅをはじめとする原宿のカワイイカルチャーを世界に発信している立役者でもある。中華圏での人気も高く、中国版Twitter「新浪微博(weibo)」では235万人のフォロワーを超え、シューティングとDJをセットにしたイベントでアジアを賑わせるなど、世界のストリート・シーンで注目され、ジャパニーズ・カルチャーを作品だけでなく自身の言葉で語れる本人アーティストの一人。

Name: 米原康正
DOB: 1959
POB: 熊本、日本
Occupation: 編集者 / アーティスト
http://loveyone.com/
https://www.instagram.com/yone69harajuku/
http://weibo.com/u/185156334

RECOMMENDS