国籍を問わないアーティストや業界人たちが夜な夜な集い舌鼓を打つ。なぜ’なるきよ’なのか。吉田成清インタビュー(1/2)
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INTERVIEWS:
吉田成清/なるきよ/板前
流行りのゴタゴタに仕掛けず、美味しいもの、格好良いものを素直にね。二分の一で単純なものしよるけん、「なるきよ」があるんじゃないかと思ってね。
僕たちは10年後もこういうスタイルや文化を突き詰めて、貫いてずっと変わら無い姿勢でおろうけど、より若い人たちの文化に対しての価値観が物凄いスピードでなくなってきているよね。流行りのゴタゴタに仕掛けず、美味しいもの、格好良いものを素直にね。 二分の一で単純なものしよるけん、なるきよがあるんじゃないかと思ってね。
食事をとるとゆうよりも、お茶を飲むかも知れんけど、腰を据えて人と接して永く付き合う席が少なくなってきている気がして。純喫茶までいかんけど、そこには音があって、ニュースペーパーやエロ本があって、いつもの人がそれを手に取って時間を買ってくれるね。今追いやられとる時代の中で、そこにいた二時間かもしれんけど余裕があるね、お茶を飲むってそういう文化だと思っとるんよ。
便利な時代に生かしてもらっとるけど、やっぱり情報が飛び交って、頭ごなしで言うと先入観から入るような時代になっとる。食事を探す云々でいうと、こういうお店でホームページを持たないのは日本で僕だけかもしれんと、うちのスタッフは言うわけですよ。「紹介するもんやなかろうもんこんな店」っていった矢先が、そういうもの見てまた新たにお客さんになってくれる人が確かに多い気もする。それは東京だからかもしれんしね。
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食がファッションになってきたのも事実やね。その分、職人の人たちが、活躍していない気がして勿体ない。
食べる事がいつからかファッションになってきとるね。 並んでいる雑誌のケツページなんかには、必ず飲食店やカフェという食に関しての記事が載るようになった。 僕達が板場はじめた頃は全然そんな事なかったし、食がどんどんエンターテインメント的になってきてる。 美味しさはお金を頂くから当たり前で、問われるものが食べる事というスタイルになってきた。
それに対して僕たちが表現出来るツールが、音であったり器だったりするね。 やっぱり器も作るし、ガラスも吹かせるしね。 美味い不味いもそうやし、格好悪いか良いか、二分の一たいね。 スタイルを出すという事は、合うと合わん人が勿論出てくるという事やけん。 ファッションで、プレーンもなのもあれば、ツートーンもあれば、モードもあれば、斬新な感じで色んな分野があるのと一緒。 食もそういう風な見方でアートとしてとられるようになってきたと思うよね。
だから食がファッションになってきたのも事実やね。 その分、職人の人たちが、活躍していない気がして勿体ない。 昔は冠が要らなかったから、今は表向きがないと、人が入るだとか入らないだとか。 問われるならば、本当に良いものが売れていない気がするし、なんであんなトコが流行っとんのか言われとる店が流行ったりとかね。 けどやっぱそれはファッションしとるかもしれんし、良い女がカウンターにいるからかもしれんし(笑聲)ある意味そういう時代になってきとるとよね。
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食べる事に興味を持ってもらうよりも、今更ですけど浪漫を持って欲しいと思うね。「成清さんや・ら・せ・てっ!」いう言葉がね、その夜を貰いよるわけよ。
食べる事に興味を持ってもらうよりも、今更ですけど浪漫を持って欲しいと思うね。イタリアンからフレンチまでとか、自分のリクエストが出来る良い店を持ってるなら、素敵な彼女であったり、こなす女であったり、同級生であったり、先輩であったりね。食事の仕方が十人十色であるなら、そういうお店を自分でしっかり持つことやね。
僕たちは毎晩テレビのチャンネルみたいに、テーブル一番から六番までとかをNHKからTBSまでやってるような気持ちで夜を預かってるね。高級料理店とかにも憧れるし、中居がいて、スムーズな料理屋もいいけど、 ある時から僕は、やっぱり瞬間芸であって、その人たちが目に見えて、いい塩梅で帰れたりする飲み屋がしたかったし、B級の一番になってみたかった。気持ちはね、やっぱりいろんな意味での一番になりたいですけど、そういった意味じゃ人が見た時には、居酒屋とか割烹、料亭、いろんな言い回しが飯屋にはあるからね。
以前は雇われで潜りみたいな気の利いた店しよったけん、東京でそういう凄さ、人も見せてもらったしね。東京っちゃ凄いやっぱり、田舎には味わえん事と、その人の夜をいただけるうちが花たい。「成清さんや・ら・せ・てっ!」いう言葉がね、その夜を貰いよるわけよ。 何作っても怒られんけん、やっぱり頭使うもん。毎日同じ事はやりたくないけん、覚えるばい。本当に飽きんし、楽しんどる。親に感謝しとる、飯屋でレール引いてもらったことに。
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同じもんを同じように作って、それが同じように売れていく。今ですらそれを食べに来るファンがごまんとおる親父の方が凄いと思ってね。
僕は、久留米で産まれ、育ったのは甘木市(現、朝倉市)。厳しかったね。インスタントラーメンとか冷凍食品に凄い憧れた、食べよって見つかるとぶん殴られよった「お前飯屋やろが」って。懐かしかね。 両親は、わざわざ言うような店やない、普通の店やったけど、今んなって僕からみるとやっぱ凄い店やね。
当時は、雑誌に載ってる様な職人さんに憧れて、ああ格好ええと思いよったけど。同じもんを同じように作って、それが同じように売れていく。今ですらそれを食べに来るファンがごまんとおる親父の方が凄いと思ってね。最近思うね、格好良いもの、色気ってのは他のものから貰えるけん。
お店なんてなーんもなくてモルタルで、型の器にどんどん入れとって、ばってんそれがスタイルになって何百杯って売れていくからね。ある人が言っとったけど、ニュー長田屋さんへ行こうってなった時に、千円握りしめて、ホルモンとちゃんぽんでも食うて950円で帰るっていう寸法できとるわけ。凄いと思うよ、そんなとこですくすく育った。
※ニュー長田屋
福岡県朝倉市にある食堂。吉田成清氏の生家。
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選り好みえらい好きやけん、嫌味とか書かれるの好きやけんね。最高の褒め言葉やと思う。人や街に合わせて献立決めるなら、パンケーキやっとけば良かよ。流行りをね。
うちの両親みよったけんね。選り好みえらい好きやけん、嫌味とか書かれるの好きやけんね。最高の褒め言葉やと思う。本気になる人と、本気にならん人がおるけんいかんね。料理人の人が来たら、なめたもんだすもんね。 ばってんうめーじゃんて、そこは絶対負けんもんね。取り方で全部違うやん魚も、背と腹で。
寿司屋なんて行ったら、ちんちくりんやけんが、変なものだされるやん最初。勘弁して下さいよ、直ぐ言うやん俺。こりゃないでしょって(笑聲) もう最後ガリーくださいって言うもん。 ウチは銭持っとろうが、持ってなかろうが関係ない。隣のテーブルは違う、まずは生き方頑張りやね。って。それが変わらんけんウチは良いんやないかな。
万歳したら帰れば良い位の、まだ親に甘えとるところもあるし、だけん自分の好きな店しなつまらんて。自分が行きたい店、客の立場になった時に、なるきよに行きたいという店に常にしていないと、絶対流行らん。 色気のある人も呼びこめんと思っとる。そんな仕事しとる人はそうはおらんし、人や街に合わせて献立決めるなら、パンケーキやっとけば良かよ。流行りをね。赤が黒に見えて何が悪いって、それば貫いて間違った時に、初めてやり直せば良いと思っとるしね、やっぱ赤やったねって。
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お前明日も来るんだろって!?ある時からなんぼ食うて飲んでも3千円しかとらんとよ。明日も来るんだろくらいの気持ちで、良いなーと思って、そげんか店が。
ある時にね、梅田の立ち飲み屋のおっちゃんとこへ毎日行っとったら、お前明日も来るんだろって!? いつからか、なんぼ食うて飲んでも3千円しかとらんとよ。明日も来るんだろくらいの気持ちで、良いなーと思って、そげんか店が。お金がないなりに座敷から作って、立ち飲みでもいいんじゃないかい?って。ウェイティング場であったり、引っ掛け場であったりして、座敷と入れ替えながらもね。あかんなーじゃあ次行くわって、千円置いてってもらえば構わんしね、それをスタイルにしたら格好良かろうと思ってね。ただやっぱりラインを引いてやるのも店の仕事やん。あんまりそれがイケイケで発展場になって、あそこいったらボボできるばいってなってもつまらんし。
金なかったたい、この店は僕がイメージしたとやんね。 4年半働いて、独立のお金を貯めたんよ。四国回って、今の漁場を抑えて、博多に帰ってね、仕入先を作って。ここ以外どっこも口聞いてくれんくてね、この通りには誰もおらんかったよ。店は増えて賑やかになったけど、相変わらず人はおらんよね。だからもうここはナルキヨ通りよ(笑聲)
板前40sパリコレへ。エロとは機転それが ’なるきよ流’ 吉田成清インタビュー(2/2)☞続く
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PROFILE
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東京青山の裏路地に居酒屋「なるきよ」はある。 ホームページすら持たないこのお店に集まる国籍を問わない様々なアーティストや業界人は多士済々である。 板前であり店主の吉田成清氏の背景には、30’sカルチャー、音楽、映画からロシア・アヴァンギャルドと洽覧深識。 日本の風土、和の心、そしてアートを表現した料理たちは、驚くほどに美味い。 食べることを超える経験と、人生についてまでを考えさせられる、それが「なるきよ」だ。
Name: 吉田成清
DOB: 1972
POB: 福岡, 日本
Occupation: 板前
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